mj-lionの備忘録

暇な法律家による,読書・映画等についての覚書です。

「僕のいる場所」(乃木坂46)という<死別>をうたう曲

君のことを考えた

 

僕が死んだ日のことを・・・

から始まる,乃木坂46の曲を知っている人はどれくらいいるだろうか。

印象的なメロディーラインなので,表題曲以外にも関心を持ったことがあるファンであれば,きっとどこかで聴いたことを覚えているんじゃないかな,というこの一曲。

作詞はもちろん秋元康,作曲はヒットメーカーの杉山勝彦さんである。

 

歌詞の全文は,http://j-lyric.net/artist/a0560d3/l03444b.html

で確認していただくとして,ストーリーと感想を書きたい。

 

***

 

この歌詞は,正面から<死別>をうたっている。

1番のサビは,

 

だから決めたんだ

僕がいる場所を・・・

部屋の右側の壁の端っこに

悲しくなったらここへおいで

背中つけて

 

すごくないですか,この歌詞。

「僕のいる場所」というタイトルをみて,しかもアイドルソングで。

 

(よくある)月をみて恋人を思うとか,形見を残すとか,そういう物体的な象徴に委ねるのではなくて,「部屋の」「端っこ」に<存在>しているから,重ね合わせてごらん,という驚きの発想力。

 

そして,2番。

 

もしも生まれ変わったら

君にもう一度逢いたい

 

 

上の1番からくれば,ふむふむという歌詞の流れ。

しかし,ここからがすごい。

でも赤ちゃんの

僕を君は見て

気づいてくれるか

僕だってわかるかな

だから決めたんだ

僕のその証拠

君の手を握り

二回ウィンクする

ぐずっていたって

眠ってても

キスをしてよ

 ほんとに,とある赤ちゃんに生まれ変わったあとのストーリーが続くのだ。

そして,2回ウィンクをする。

この歌詞に出てくる「僕」,天才。

 

ラストサビでは,

 

だからそう君も

約束して欲しい

一週間くらい泣いて暮らしたら

深呼吸して空を見上げ

笑顔みせて

 

とくる。

ああ,悩める「僕」は,このセリフは恋人に言っているのかな,と思わされる。

心のうちに,あるいは対面で,冗談っぽく言っているのかもしれない。

恋人は,どんな反応をしているのか,冗談だと受け取られているのか,

それとも,悲しげな顔をみせているのだろうか。

 

ここで終われば,ちょっとは救われた感じになるのに,

ラストサビのあとに,もう一度,

 

君のことを考えた

僕が死んだ日のことを・・・

ずっとそばにいたいけど

別れはやって来る

 

ときて,締めくくられてしまう。

 

***

 

悩める「僕」は,結局悩んだままだ。

でも,この世界観こそ,単なるハッピーアゲアゲなラブソングではない,

この曲のすごみの一つだと思う。

この「別れ」だけは,いかようにも逃れられないという現実。

そこに直面していく,だからこそ,大切な誰かと,日々を大事に過ごしていく。

 

神曲だ。